アフリカにおける植林運動、グリーンベルト運動の創始者であり2004年度ノーベル平和賞を受賞された、ワンガリ・マータイ元ケニア環境副大臣が2011年9月24日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
過去に、弊社のホームページで、「もったいない」という言葉を通訳し、「MOTTAINAI」が生まれるきっかけとなったエピソードを「通訳こぼれ話」としてご紹介しておりました。故人を偲びつつ、ここに再掲載いたします。
コミュニケーターズ通訳こぼれ話
‘もったいない’
KEIRETSU、TSUNAMI、SUDOKU…日本発の国際語は既にいくつもあります。一番新しく知られるようになったのはMOTTAINAIでしょうか。
ケニアの環境副大臣で2004年のノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが2005年2月に毎日新聞の招聘により来日され、環境保護のメッセージとして‘MOTTAINAI’を発信されました。空港のお迎えに始まり、東京におけるスケジュールの間ずっと通訳者として私が同行させていただいたときのエピソードをご紹介します。
‘MOTTAINAI’のきっかけは来日当日、毎日新聞本社においてマータイさんへのインタビューで観堂義憲編集局長が「日本には『もったいない』という言葉があるが、どう思われますか?」と質問されたことです。小泉首相のreuse, reduce, recycleキャンペーンのお話などについての長い質問の最後のほうでした。
この時私は"in Japan we have this expression mottainai, which means it's so wasteful"
と通訳しましたが、かなり長い通訳セグメントの中の一部なので、印象に残らなかったらしくマータイさんはお答えの中でその部分に言及されませんでした。
その後、マータイさんは車で別の場所に移動され、同乗していた私は「マータイさん、先ほどのミスター観堂の『もったいない』という言葉だけれど、例えば子供がまだ食べられるものを捨てたり、使えるものをゴミ箱に入れようとしたりしたら、日本のお母さんは『もったいない!』と叫ぶのですよ」と申し上げました。
するとマータイさんは「さっきは答えそびれてしまったけれど、それはすばらしい言葉だわ」とおっしゃいました。
その晩毎日新聞主催のレセプションでマータイさんは 「私は今日、日本にすばらしい言葉があると知りました。『もったいない』という言葉です」というスピーチをされたのです。
その後は、毎日新聞でも、他のメディアでも大々的に報道され、マータイさんは小泉首相や各界のトップリーダーと会談なさるたび、‘MOTTAINAI’という考え方のすばらしさを繰り返しおっしゃったのです。
その後‘MOTTAINAI’ロゴをいれたTシャツの売り上げの一部がマータイさんの植林運動に寄付され、音楽が作られ、‘MOTTAINAI’をキーワードにしたキャンペーンが各地で展開されるようになり、ご存知のとおりの国際語となりました。
生きたコミュニケーションのお手伝いをすることが通訳者の使命です。
マータイさんに同行させていただく中で、マータイさんにわかりやすい表現で再度説明するチャンスをいただいた幸運をかみしめました。
その後もマータイさんのコミュニケーションのお手伝いを私たちがさせていただいています。
『もったいない運動』の広がりを、コミュニケーターズ一同、とりわけ嬉しく見つめています。
代表取締役 平岡貴子